修二会聴聞記<走り>(平成31年)



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平成最後の修二会。
会中、数ある行法のなかでも<走り>は好きな行法のひとつで、視覚、聴覚、嗅覚のほかに、触覚と味覚も加えた五感で体験できるのがよい。
今回聴聞した<走り>では、中灯と処世界が印象的でした。


<走り>の冒頭は、本手水後、先に内陣に戻った平衆によって行われる鈴の掛け合い(互為鈴)。
これは劇場で開演直前に鳴らされるブザーに例えたらいいでしょうか。
遅れて四職が内陣に戻ると、賑やかに振り鳴らされていた鈴が止む。
発願、互為加持、四方加持と続いたあと、須弥壇まわりの行道が始まり、和上最上、次第最上、上座五体、最後に走り五体を行う。
それぞれの詳しい説明は省きますが、次第最上では長く唱える「南無最上」(長最上)を和上から大導師、咒師、堂司、北座衆之一、南座衆之一、北座衆之二、南座衆之二、中灯、権処世界、処世界の順に引き継ぎながら行道する。
練行衆全員が差懸をごろごろ鳴らしながらなので、聞き取りにくい場合もある。
引き継ぐ場所は内陣の南西角で、その際、引き継ぐ練行衆が一時的に後ろ向きになって引き継がれる練行衆とお辞儀をし合う。
引き継がれた練行衆は長最上を唱え、引き続き皆で行道。
最後の処世界が唱える番になると、処世界が大導師の着座位置あたりに来たところで行道が停止。
内陣が静寂になったところで、処世界は立ったまま北西向きになって珠数を両手で掲げ、声を張り上げて長最上を唱える。
今回の処世界のこの様子がとても素晴らしく、後で絵にしたいと思ったものの絵心が無いので、しっかり目に焼き付けた。

処世界の長最上ソロのあと、再び行道が始まり、走り五体に向けた上座五体が行われる。
差懸の音が次第に小さくなっていくのは、走りのために練行衆が差懸を次々に脱いで行道するため。
和上の長く唸るような如来唄がかすかに聞こえ、足袋による行道は歩きから走りに変わってゆく。
静寂の中、トッ、トッ、トッと足音が聞こえる。
このあたりは芝居を見ているような、不思議な感覚になる。
堂司の「チョーおろせ」の大きな掛け声と、投げつけられたカワラケの音ではっと目が覚める。
巻き上げられていた戸帳がさっとほどかれて、内陣と礼堂を再び分け隔てる。
舞台の幕が下りたように感じます。


<走り>が終わると、御香水給りタイム。
内陣で練行衆に御香水が分けられたあと、堂司の「・・・礼堂に香水をまいらせ~」の声が聞こえたら、練行衆二人が香水杓を持って内陣から礼堂に出てきて、礼堂や西の局の聴聞者に御香水が分けられます。
御香水を手のひらで受けたときの冷たさ(触覚)、口に含んだときの味(味覚)。

香水杓を持って出てきたのは、中灯と権処世界。
礼堂で聴聞していた管長さんは中灯から御香水を受け取ったあと、中灯の袈裟の位置を手直ししていました。
叱咤激励しているようにも見えました。



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観音うどん
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≪余談1≫

 上座五体のときに礼堂で堂童子が釣り鐘を鳴らしていると、麓の奈良太郎の重低音が響いてきました。
 礼堂の鐘と奈良太郎の共演を耳にすることができました。

 <走り>の行法では堂童子も大活躍。
 特に行道が始まったあたりから行われる戸帳の巻き上げの見事さ。
 巻き上げるにしたがって内陣の様子が下の方から徐々に見えてくる様は、舞台の幕が上がるときのよう。
 戸帳を隔てて聞こえていた差懸の音がダイレクトに聞こえてくる。
 須弥壇の灯火や造花の椿も見えてくる。
 礼堂や西の局からこのような様子を見ることができる。





≪余談2≫

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今年の修二会は終わりました。
また来年。
二月堂にいる黒い鳥にも会いに来て!



若狭の水はパワフル!


3月2日午後8時ごろ、福井県小浜市の鵜の瀬から東大寺二月堂に向けて、観音様にお供えするお香水が送られます。
「お水送り神事」です。
遠敷川に注がれたお香水は、地下水脈を通って10日後に二月堂の閼伽井屋に届くと伝えられています。
修二会の「お水取り」が行われるのは3月13日午前2時ごろなので、届くのに約246時間かかる計算です。

もう少し、調べてみました。

鵜の瀬と二月堂の位置関係は以下の地図に示すように、ほぼ南北線上にあります。
直線距離で約84.5km離れています。


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水が進む速度は、84.5km÷246時間 なので、時速約0.34km。
単位を変えると、時速344m、分速5.7m、秒速9.5cm です。
何と、1秒間に10cmほどしか進んでいません。

もっと驚くのは、その高低差。
出発地の鵜の瀬の標高が約55mなのに対して、二月堂閼伽井屋のそれは約130m。
閼伽井屋の井戸は深くないと聞いていますので、高低差約75mをよじ登る強力な水です。
物理法則を覆す遠敷明神の力が働いているとしか考えられません。





お水取り行列の咒師
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(2017年3月13日午前2時ごろ)






≪余談≫

 「お水取り」の前日の3月11日、閼伽井屋の周囲に飾られていた古い榊が新しいものに取り換えられます。
 春日山の奥から伐り出されたものだそうです。


取り換えられたばかりの榊
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(2018年3月11日 閼伽井屋)


 葉が青々として艶のある状態は長く持たないので、貴重な様子です。



修二会聴聞記(2019年3月3日)



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今年2019年も、ありがたいことに二月堂修二会を聴聞できました。
平成最後の修二会です。
3月3日、<初夜>から<晨朝>まで聴聞。



  <初夜>
     時導師:中田定慧師
     【神名帳】 読役:清水公仁師

  <半夜>
     時導師:狹川光俊師

  〔法華懺法〕
    筒井英賢師(頭)、中田定慧師、狹川光俊師

  <後夜>
     時導師:清水公仁師

  <晨朝>
     時導師:佐保山曉祥師



<後夜>の咒師作法中に、午前1時の奈良太郎の重低音が聞こえて来ました。
下堂は午前1時20分ごろでした。



さて、この日の神名帳の読役は清水公仁師でした。
参籠して3年目で初めて読役に指名される資格が得られますが、二七日の本行中のいつ読役になるか公表されません。
幸運なことに、公仁師が練行衆として初めて神名帳を読み上げる場に、今回立ち会うことができました。

照明がわりの灯火を左前に置いて、神名帳を巻き進めながら、通る声で一所懸命読み上げている横顔を北側の外陣から拝見しておりました。
大役を立派に果たすことができて、ご本人もほっとされたのではないでしょうか。
聞くところによると、この日公仁師の初神名帳でお水取り女子界隈が騒然となっていたそうです。

奈良新聞社が神名帳の読み上げをしている公仁師を取材していました。
もちろん特別な許可を得た上での取材です。
記事がこちら → (記事の公開は期間限定と思います)

<後夜>の時導師も公仁師で、今度は南側の外陣からそのお姿を拝見しておりました。



下堂 「ちょーず、ちょーずー」
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≪余談≫

 なら町にある「おくた」のみたらし団子は、東大寺の僧侶もお気に入り。
 店内には上野道善長老ほか、東大寺の僧侶の書や絵が飾られています。


公仁師の父・清水公庸師の書画
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 故公庸師はご子息が無事神名帳を読み上げられたことをきっとあちらで喜んでおられるでしょう。
 書画のタッチは義父の清水公照師を引き継いでいるように感じます。



糊こぼし椿2019


去年(2018年)、おととしと、東大寺開山堂の糊こぼし椿は開花時期がとても遅かったのですが、今年はすでにたくさん咲いています。
(お寺の方によれば、いつもはこんな感じとのことですが)


糊こぼし椿(良弁椿) (2019.3.3)
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(手前のピンク色の花は別の花)

開山堂のすぐ脇にあります。
四月堂から塀越しに見えます。
開山堂を囲むこの塀の際の椿は糊こぼしではありません(念のため)。








落ちた花の実物は四月堂で展示中。
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二月堂須弥壇を荘厳する椿の造花に比べると、かなり大振りですね。








四月堂には奈良三名椿[さんめいちん]の紹介もあり。
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・伝香寺(ちり椿) [左上]
・白毫寺(五色椿) [下]
・東大寺(のりこぼし、良弁椿) [右上]



二月堂修二会撮影規制状況(2019年)


昨年2018年の場合()からさらに規制が厳しくなりました。
お松明が始まる前とお松明中、二月堂の舞台に滞在できるのは、上七日(3月1日~7日)だけとなりました。
舞台での撮影だけが規制されたのではなく、舞台滞在そのものが規制強化されたということです。
今度の週末に舞台で松明を見たり、撮影しようと計画している方、残念ながら不可です。


二月堂舞台の柱の注意書き(2019年版)
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二月堂の舞台でお松明を見られると知った人が年々増えてきたのではないでしょうか。
舞台上の収容人員が危険領域に近づいてきたと判断され、特に人出が多くなる下七日(3月8日~14日)は舞台滞在不可としたのではと推測。
(もともと12日と14日はお松明が始まる前とお松明中は舞台だけでなく西の局も滞在不可)

もうひとつの原因は松明狙いのカメラマンでしょう。
夜7時から始まるお松明の撮影のために、その日の昼前から場所取りをする人たちが現れて、時間が経つにつれて次第に増えていきます。
一般の参拝者の邪魔になっていますよ。
昨日の夕方には、舞台で食べている場所取り人もいました。
神聖な場所であることを理解していませんね。

このままでは上七日も滞在不可となるでしょうね。


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なむさいじょう

Author:なむさいじょう



阪神エリア在住のおっさん。
時間を見つけては奈良めぐり。

※2013年までの過去記事は本サイトへインポート後、一部を除いてリンクの更新等を行なっておりませんので見苦しい部分があります。ご了承ください。
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