「鈴木松年」展


鈴木松年 [すずき しょうねん] と聞いて、どれほど知っている人がいるでしょうか。
現在ではほとんど忘れられていますが、明治から大正にかけて京都を中心に活躍した日本画家です。
曾我蕭白に私淑したため画風も豪放、迫力のある作品が多く、
“今蕭白” [いま しょうはく] と言われるほどだったそうです。
日本画家・上村松園の最初の師でもありました。
今年2018年で生誕170年、没後100年となる鈴木松年の展覧会が、香雪美術館(神戸市東灘区) で開かれています。
京都の祇園祭に係る屏風なども展示されています。


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  ※以下の説明では、展覧会のチラシや出品リストを参考(一部拝借)。






【宇治川橋合戦図屏風】 絹本着色 6曲1双、明治44年(1991)、浄妙山保存会


全体
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左双
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右双
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  治承4年(1180) 5月26日、以仁王・源頼政率いる源氏軍と、平重衡・平維盛率いる平家軍が宇治川で橋合戦。
  平家方からの矢が飛び交う中、先陣に向かおうとしている三井寺の僧兵・筒井浄妙が武器を失って
  敵の猛攻にさらされていたところ、後ろから来た一来法師 [いちらい ほうし] が
  「悪いけど、先行くでぇ~!」 と叫んで(?)、浄妙の頭上を飛び越えて先陣をとる場面は、
  『平家物語』 でよく知られていて、昔から題材としてしばしば描かれてきました。
  折れた太刀を手にたじろぐ浄妙と、薙刀を手に滑空する一来の躍動感と緊迫した様子が、
  画面を横切るように架かる宇治橋に大胆に配置されています。
  6曲1双という大画面なので、大迫力です。




【角力図押絵貼屏風】 紙本着色 2曲1隻、絵:明治6年(1873)、書:大正時代、立命館大学(長江家旧蔵)

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  京都市指定有形文化財の 「長江家住宅」 は、京都を代表する京町屋のひとつ。
  NHK-BSプレミアムのドラマ 「京都人の密かな愉しみ」 のロケ地として使われたこともあります。
  祇園祭・前祭の宵山の期間にあわせて会所の近くなど各所で屏風祭が行われますが、
  「船鉾」 の前にある長江家住宅でも屏風祭をやっています(有料)。
  そのときに屋内の座敷で展示される屏風のひとつがこれ。
  今回の 「鈴木松年」 展については、奥の部屋に置いてあった展覧会のチラシを見つけて知ったのでした。




【仁王像】 紙本着色 2面、明治19年(1886)、平等寺(因幡堂)

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  京都の平等寺本堂の須弥壇裏を飾っているこの絵は、つい最近になって鈴木松年のものと分かったそうです。
  2016年の京都非公開文化財特別公開のとき、頭に頭巾を乗せた本尊・薬師如来さんをお参りした際、
  この仁王像も拝見しました。
  須弥壇の裏側にあるため薄暗く、よく見えなかった印象がありましたが、今回の展示でじっくり拝見できました。




【柿に目白図】 紙本着色、1幅

  掛け軸。
  葉が数枚あり、実がなっている柿の枝に、3羽のメジロが並んで止まっている。
  さらっと描いているようにみえますが、なんとも上手い。
  個人的にこの絵がこの展覧会のベストでした。




【肥後橋風景】 佐伯祐三、キャンバス、油彩

  まさか佐伯祐三の絵をこの展覧会で目にするとは思わなかった。
  うれしい出会いでした。
  展示理由などは長くなるので省略。(悪しからず)



※ いつも思いますが、香雪美術館、簡略版でいいので展覧会の図録が欲しい。。。





≪余談≫


 ■ 筒井浄妙

  祇園祭の浄妙山も、浄妙とその頭上をまさに飛び越えようとする一来の劇的な場面を表しています。
  浄妙山会所では宵山のとき、浄妙と一来が並んで立っていて、その背後に今回の屏風が展示されます。
  屋島の合戦と鵯越逆落しの場面が描かれた屏風も出ます。

浄妙山会所
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手前にある 「山妙浄」 の字は、堂本印象画伯による。


  『平家物語』 によれば、先陣を取らんとした一来は浄妙を飛び越えた直後、矢面に立ったため討ち死。
  重傷を負った浄妙は、反平家勢力の集う南都へ向かった。
  「浄妙塚」 については、弊記事 「南山城・寺社めぐり(4)」 でどうぞ。




 ■ 平等寺(因幡堂)

  高倉天皇の寵愛を受けた小督局は、平清盛によって強制的に追放されました。
  高倉天皇ゆかりの因幡堂には、小督局が自身の髪の毛を織り込んだ光明真言の織物、
  小督局愛用の琴や硯箱が保管されています。
  もちろん伝説です。
  (京都非公開文化財特別公開で拝見済み)

  大手百貨店の高島屋にもゆかりのある因幡堂。
  門前にある石灯籠には、丸に高の印が刻まれています。

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  現在使われている高島屋のマークは、この石灯籠に刻まれている印が元祖と言われています。



「糸のみほとけ」展など


奈良国立博物館の「糸のみほとけ」展。(2018年7月14日~8月26日)
ようやく観ることができました。



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拡大すると、
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刺繍っぽくデザインされた字ですね。





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ネットなどでいろいろな感想が出ていますので、
ワタクシはあまり注目されていなさそうな作品に対する感想などを少々。
(一部、図録を参考にしています)




【東大寺要録 巻第八】 (出陳番号 33)

  かつて大仏殿の東側と西側のそれぞれに大曼荼羅(織物)が掛けられたことが記されています。
  記述によれば、東の曼荼羅は観自在菩薩像、西の曼荼羅は不空羂索観音菩薩像で、高さ約16.2m、幅約11.5m。
  大仏さんの高さに近く、巨大なものだったようです。
  (綴織当麻曼荼羅が縦約4m、横約4mなので、いかに巨大だったか)
  治承四年(1180)12月28日の南都焼き討ちで、焼失したらしい。
  一度、見たかったなあ、残念。
  (南都焼き討ち関連には食い付きます)



【刺繍不動明王二童子像】 (出陳番号 45)

  眺める位置を正面(角度0度)から次第に横へずらしていくと不動明王の体が輝きだして、
  左斜め60度あたりになると、燦然と輝いて立体的に見えたのがビックリでした。
  照明の妙ですな。



【刺繍九条袈裟貼屏風】 (出陳番号 71)

  木の下にいるウサギがとてもカワイイ。
  その下のほうにも、ゆる~い感じのウサギとカエルがいて、思わず顔がほころびます。
  このウサギ、壺のようなものの上に手を置いているのですが、どこかで見たと思ったら、
  【天寿国繍帳】 にいるウサギも同じような構図ではありませんか。
  何か決まりごとでもあるのでしょうね。



【刺繍阿弥陀三尊来迎図】 (出陳番号 93)

  使われている毛髪。
  黒髪のほかに、茶髪もある。



【刺繍八幡神名号】 (出陳番号 133)

  八幡神の使いのハト。
  お約束どおり、向かい合った一対のハトがいますよ。




織物や刺繍にはまったく不案内なので、いまひとつ理解できないことが多かったのですが、
根気が要る作業であることは素人にも分かりました。
こういったものを仕上げようとする気力は、篤い信仰心からきているのでしょうね。
展示後半にたくさん出てくる来迎図は、食傷気味でした。





≪余談≫

 同じ奈良博のなら仏像館。
 超VIPが来館中です。


釈迦如来座像 (室生寺弥勒堂)
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(チラシから拝借)




弥勒菩薩立像 (室生寺弥勒堂)
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(チラシから拝借)



 弥勒堂の改修工事に伴って、一時的に奈良博に寄託されているもの。
 工事は2019年3月末までとのことなので、そのころに山へ戻られるのではと推測。
 それまでは、なら仏像館で520円(特別展などは除く)で拝見できます。



 なら仏像館からその他に。。。


天神坐像 (初瀬・與喜天満神社)
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(チラシから拝借)

 現地であの白洲正子が頼んでも見せてもらえなかった 「怒り天神」。


 数体展示されている阿弥陀如来立像の中に喉元内部に鈴がついているものがあって、
 今でも軽やかな音が鳴るそうです。
 一度、聞いてみたいものです。

 南都焼き討ちで焼失した東大寺大仏殿の焼け残りの柱材で造られた愛染明王坐像。
 焼き討ちのあった治承四年(1180)から76年後の建長八年(1256)に制作されたもの。
 その経緯は台座裏などに墨書されています。
 焼け残り材を捨てず、大切に保管した当時の人たちの気持ちに、思いを致したい。




地階にある記念撮影コーナー

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上手すぎないのがいい。



手向山八幡宮のハト


八幡神の使いは、ハト。
八幡宮や八幡神社の境内で、ハトを見かけます。
たいていは一対です。
東大寺法華堂の南側にある手向山八幡宮にもいますよ。



石灯籠に6羽のハトがいるの、わかりますか?
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竿に刻まれた 「八」 の字。
体は向かい合っているのに、頭はお互いに背けています。
鶴岡八幡宮の扁額の 「八」 もこのタイプ。








絵馬
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最近あちこちでやたらと目に付くハート形。
ハート形を作るために、無理矢理おなかを張り出している感たっぷりのメタボなハト。
ハト胸ではなく、ハト腹ですな。








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もちろん、もう一羽います。








ご朱印
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「八」 の字が向かい合う一対のハト。






手向山八幡宮へお参りに行ったら、いろいろなハトを探してみてください。


奈良の不空羂索観音巡礼



この8月に、奈良市内の不空羂索観音さんを2か所巡りました。



〔1〕 応現寺 (奈良市東鳴川町)

  ※ 不空羂索観音菩薩坐像(東鳴川観音講(応現寺)) →

こちらの不空羂索観音菩薩坐像(木造、平安時代、国重文)は、治承四年(1180) 12月28日の南都焼き討ちで焼失する以前の興福寺南円堂にあった不空羂索観音像の模刻と伝わります。
後補と思われる羂索のほかに持物はありませんが、平重衡に焼かれる前の平安仏の様子を今に伝えている点で、かなり貴重です。
寺と言っても住職はおらず、実際には地区の集会所を兼ねたような建物です。
エアコンの効いた小広間で、当番の世話役さんが親切に対応してくれました。
展覧会でフランスへ出張したことがある、と世話役さん、少し自慢げ。
お茶やお菓子をいただきながらの雑談も楽しかった。
こういう参拝、いいなあ。

ご朱印はありますが、セルフです。
スタンプが用意してあって、自分で朱印帳に気合を入れて押します。
横で世話役さんが、スタンプの押し方のコツを指南してくれました。

応現寺が開扉されるのは、毎月第一日曜日のみ。
バスの便も非常に少なく、スケジューリングに要注意です。

  ※ 奈良市HP 東鳴川町 「木造不空羂索観音坐像」の公開 →


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いちおう奈良市内ですが、バスを1本逃すと大変なことに!





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〔2〕 不空院 (奈良市高畑町)

「ちょこっと関西歴史たび 奈良・高畑」キャンペーン(JR西日本主催)で、この夏、特別公開されました。
(2018年8月5日~14日)
こちらの不空羂索観音菩薩坐像(木造)は鎌倉時代の制作で、国重文です。

  ※ 不空羂索観音菩薩坐像(不空院) →



内陣の壁上部に描かれている天女の絵は、新薬師寺の元住職で、二月堂修二会の練行衆をつとめたこともある福岡隆聖師によるもの。
そんな予備知識はなかったので、説明を聞いてビックリでした。
同じキャンペーンで先日、新薬師寺を参拝し、さらに奈良市写真美術館の「奈良を愛した文士と高畑界隈」展で師が写っている写真を偶然拝見できたこともあり、なにかご縁があるような気がしてなりません。
それと、不空院が鑑真や空海のほかに、井上内親王ゆかりの地とも知って驚きでした。

  ※ 不空院HP →


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(拝観のしおりから拝借)





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さて、奈良市内には彫像の不空羂索観音のおわす寺院がほかにもあります。
ワタクシの参拝実績は、以下のとおり。



■ 東大寺法華堂 (乾漆造、奈良時代、国宝)

  各所にある不空羂索観音像のなかで、一番有名ではないでしょうか。
  最高の材料と技術で制作されています。しかも奈良時代に。

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「東大寺大仏 天平の至宝」展(2010年、東京国立博物館)では、繊細極まりない光背が出陳されました。




■ 興福寺南円堂 (木造、鎌倉時代、康慶作、国宝)
  →

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毎年10月17日に特別開扉されます。



■ 大安寺 (木造、奈良時代、国重文)
  →


■ 唐招提寺 (木造2体、平安時代、国重文)
  →
     新宝蔵に安置されている獅子吼菩薩立像と衆宝王菩薩立像は、本来は不空羂索観音とのこと。



なら写真感 #165 不空院




誰そ彼



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なむさいじょう

Author:なむさいじょう



阪神エリア在住のおっさん。
時間を見つけては奈良めぐり。

※2013年までの過去記事は本サイトへインポート後、一部を除いてリンクの更新等を行なっておりませんので見苦しい部分があります。ご了承ください。
※過去記事へのコメントも歓迎。

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