明遍僧都


昔、明遍 [みょうへん] というお坊さんがいました。
源平の争いがあった平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した人。
高野山蓮華谷の高野聖としても知られています。


以下、略歴。

  康治元年(1142年)生 - 貞応三年6月16日(1224年7月4日)没。
  号は空阿弥陀仏。
  父は藤原通憲(信西)。
  兄弟に、静賢、澄憲、憲曜、藤原成範、勝賢、寛敏、覚憲ら。
  甥に解脱房貞慶、恵敏ら。姪に阿波内侍、小督ら。
  平治元年(1159)、18歳の時、平治の乱に巻き込まれ、父信西は斬首され、自身も佐渡に流罪となる。
  数年後許されて、東大寺東南院に入り、三論宗を学ぶ。
  南山城にあった東大寺末寺の光明山寺に遁世。
  その後、専修念仏の法然に帰依して高野山に入り、蓮華谷に蓮華三昧院をひらく。



東大寺東南院 (現東大寺本坊)
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(本坊から若草山方面)
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奥の建物には、醍醐寺開山で東大寺東南院を創設した理源大師聖宝の像が安置されている。








光明山寺跡 (京都府木津川市)
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明遍のほか、永観や実範といった著名な高僧もいた。





信西の子や孫は当時の仏教界の大物ばかりですね。
勝賢は醍醐寺座主のほか、東大寺別當もつとめています。
貞慶は奈良国立博物館で特別展を組まれるほどの名僧。
阿波内侍、小督は 『平家物語』 でお馴染みですね。
『平家物語』 の作者の中に、憲曜や藤原成範がいる可能性もあるそうです。



文治二年(1186)、法然房源空が京都大原の勝林院で浄土宗の教義について、叡山・南都の学僧と議論しました。
世に言う大原談義です。
学僧には明遍、貞慶、俊乗房重源らもいたと伝わります。


勝林院 (京都大原)
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俊乗房重源が快慶に造らせた東大寺僧形八幡神坐像の像内銘には、「アン阿弥陀仏快慶」 のほかに、
「空阿弥陀仏明遍」、明遍の甥の 「恵敏」 の名も記されています。

奈良・安倍文殊院の快慶作の文殊菩薩像。
像内納入されていた尊勝陀羅尼の奥書は明遍によって書かれ、
恵敏が願主となってこの像が制作されたことが記されています。
この文殊菩薩像の像内銘には、重源、快慶の名も記されています。

大阪・八葉蓮華寺の快慶作の阿弥陀如来立像に納入されていた書物にも、明遍や恵敏の名が記されています。

現在の高野山遍照光院に伝わる快慶作の阿弥陀如来立像は、元々は明遍が開いた蓮華三昧院の本尊だったようです。

こうしてみると、快慶は明遍の弟子だったとする伝承があるのも頷けます。





八葉蓮華寺のある交野 [かたの] 市には、明遍ゆかりの明遍寺があります。
高野山蓮華三昧院にいた明遍は、法然上人に帰依したため、高野山と京都の間を行き来したそうで、
その途中に設けた庵が明遍寺の前身と伝わります。
八葉蓮華寺と獅子窟寺を参拝したあと、明遍寺に立ち寄りました。


明遍寺
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やはり浄土宗ですね。


明遍僧都腰掛岩 (明遍寺境内)
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明遍僧都珠数掛けの松 (明遍寺境内)
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高野山蓮華谷は現在は民家が建ち並んでいますが、往時は高野聖の拠点のひとつでした。
彼らの教義は真言宗より浄土宗寄りで、念仏を中心とした独特のものでした。
蓮華三昧院は明治時代の大火で焼失しましたが、法然ゆかりの熊谷寺が蓮華谷にあるなど、今でも高野聖の活動の面影が残っています。


蓮華谷 (高野山)
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明遍僧都の墓所
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≪余談≫

 高野山蓮華谷は平家物語ゆかりの地。
  - 俊寛僧都の家人・有王丸が出家した。
  - 重源上人、法然上人(源空)、熊谷直実(蓮生)もいた。
  - 重源上人らの尽力で、処刑された平重衡の遺骨が埋葬された。
  - 一時期、滝口入道(斎藤時頼)が庵を構えていた。
  - 戦線離脱した平維盛が滝口入道を頼ってやってきて、出家した。
  - 維盛の子・六代が父親の最期の様子を聞きに滝口入道を訪ねてきた。

 その昔、これらの人々がこの蓮華谷(上記写真)あたりを歩いていたと思うと、感動しますな。


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