宸翰 天皇の書





京都国立博物館で特別展覧会『宸翰 天皇の書 ~御手が織りなす至高の美~』が開催中です。
(2012年11月25日まで)

宸翰(しんかん)とは、天皇自筆の書のこと。

先週何となく京博のHP()を眺めていたら、期間中のさらに期間限定で、正倉院宝物から聖武天皇の「雑集」と、孝謙(称徳)天皇と淳仁天皇の直筆が出陳されている、ということが判明。

  “確認されている奈良時代の宸翰は、
     1)聖武天皇宸翰雑集
     2)沙金桂心請文
     3)聖武天皇宸翰御画勅書

   の3件のみとされており、
   今回はそのすべてが展示されるというまさに奇跡的な機会”

なんだそうで、こう知ったら行くしかないでしょ。







1)聖武天皇宸翰雑集 天平3年(731)
 正倉院宝物です。
 正倉院展でしかお目にかかれないと思っていました。

(図録から)


 確認されている歴代天皇の書では、一番古いものだそうです。
 芸術的とでも言うべき風格ある書体で21mという長い紙に、緊張感を持ちながら崩れずに書き続けたその精神力の強さに驚かされました。
 筆遣いもすごいですね。たとえば「林」という字など驚きです。

 そいうえば、奈良国立博物館の新館入口にある「奈良国立博物館」の文字は、聖武天皇の筆跡から採ったもの。
 そのほとんどは「雑集」から採られたのでは?

      


2)沙金桂心請文
   孝謙天皇および淳仁天皇宸翰御画あり 天平勝宝9年(757)・天平宝字3年(759)


 こちらも正倉院宝物です。
 「沙金桂心請文」は、「請沙金注文」と「施薬院請薬注文」からなる一巻で、前者は東大寺に保管されている沙金の下げ渡し依頼、後者は桂心(薬)の下げ渡し依頼の文書。

 両方ともに大きな『宜』の字があります。
 前者の字が孝謙天皇の直筆、後者の字が淳仁天皇の直筆です。
 どちらも現存する天皇唯一の遺墨だそうです。

(図録から前者のみ。孝謙天皇の『宜』)


 『宜』は、OK! ということですね。



3)聖武天皇宸翰御画勅書 天平感宝元年(749)

 こちらは何度かお目にかかっているので、説明はパス。

(図録から。「勅」の字が聖武天皇の自筆)





 多くの宸翰のなかで、とても驚いたのは“蘭奢待”の文字が目に飛び込んできたとき。

(図録から)


 正親町天皇の手紙「正親町天皇宸翰消息」の中にありました。

 図録の解説などによると、正親町天皇が東大寺正倉院の香木「蘭奢待」の小片を下賜するにあたって、九条稙通に宛てた手紙だそうです。

 文中、“今度ふりよに勅封をひらかれ候て”というくだりがあります。
 織田信長から“蘭奢待”を切り取るよう強引な要求があって、それに応じざるを得ない無念さが“ふりよに”(不慮に)という文字に現れています。

 実はこの手紙の下書きが残っていて、それには“ふりよに”はなかったことから、清書しているうちにだんだん胸糞が悪くなってきて、つい書いてしまったということでしょう。

 実際に“蘭奢待”は、多聞城(場所は今の奈良市立若草中学校)に来た織田信長の前で切り取られました。天正2年(1574)のこと。
 そのときの様子は、東大寺ミュージアムで展示されている文書にも記されていました。






 「後陽成天皇宸翰消息」では、朝鮮出兵をしようとする豊臣秀吉に、いいことは何もないので出兵は思いとどまってください、と頼んでいます。
 手紙の最後は「太閤とのへ」(太閤殿へ)で終わっています。




 ほかにも、嵯峨天皇、後白河天皇、高倉天皇、後鳥羽天皇、書聖・伏見天皇、花園天皇、後醍醐天皇などなど。
 今は五條市にある賀名生(あのう)に幽閉されていた天皇の書もありました。
 空海、藤原佐理、藤原行成の書も出てました。
 そうそう、隠岐に流された後鳥羽天皇の朱の手形がある手紙もインパクトありましたね。手相も分かります。この手紙は後鳥羽天皇が崩御する13日前に書かれたもの。

 直筆を見ると、本人を目の前にしているような気さえする見ごたえのある展覧会です。







 東大寺大仏殿前で八角燈籠を撮っても、こんな光景にはなりません。
 京博の庭にあるレプリカの八角燈籠です。

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★みのさん、こんばんは!
もし正倉院展に「雑集」が出陳されたら、間違いなく目玉のひとつになるでしょうね。
例の正倉院展出陳10年ルール(?)が、今回の出陳にも適用されたら一大事と心配になって慌てて見に行きました。
書の展覧会なので、それほど来場者は多くなく、じっくり鑑賞できました。
文字が読めなくても簡単な説明板もあり、歴史的な背景も分かってよかったです。
時間があればぜひ。
ハッチは東国に飛んでいくまでに、バテないか心配です。(笑)
★かぎろひさん、こんばんは!
無理ですか~
京博HPにも案内ありますが、金曜日は午後8時まで(入館は午後7時30分まで)やってますので、もし時間の都合がつけばぜひ。
> 正倉院宝物が正倉院展以外に出ることもあるのですね。これも珍しいのでは。
調べたら、一昨年2010年秋の東博での東大寺大仏展では、正倉院宝物が14点出陳されていました。
その中には、今回の孝謙天皇の直筆もありましたし、何と言っても大仏開眼会で使われた開眼の「る」(ひも)が超目玉でした。
書の展覧会はあまり来場者は多くないようですが、直筆から伝わる本人の面影や歴史的な背景を感じることができて、なかなか良いものですね。

こんばんは!
みのさん同様、私もかなり行きたくなりましたが、絶対的に無理。残念。京都へ行かねばならない急用とかできないかな(笑)
正倉院宝物が正倉院展以外に出ることもあるのですね。これも珍しいのでは。
そうそう、奈良国立博物館の文字は「雑集」でしたね。
なぜ光明皇后の文字にしなかったかというと、「楽毅論」では全文字が揃わないから、とか。
それにしても、筆跡、いずれも美しいですねぇ。ほれぼれ。
直筆は、ほんとにその人を身近に感じさせてくれますよね。

『出雲展』の時に入手したリーフレットを手に行くのを迷っていました。実のところ書は、まったくわかりませんので。
25日まで、時間ができれば訪ねたいと、なむさいじょうさんのブログで心が動かされました。
こうしていつも、よき刺激をいただいております。
あっ、それから、将門もハッチには敵わないでししょうね。
ちらちらと垣間見るなむさいじょうさんの愉快さも、楽しみのひとつとなっております。
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