盗まれた宝冠


不空羂索観音さんの宝冠。
法華堂(三月堂)に侵入した賊に盗まれました。

昭和12年のこと。
そしてもうすぐ時効になるというときに事件は解決し、宝冠は無事戻りました。

なんでも、自宅の押入れに盗品を隠していたら、犯人の妻がその押入れの前で苦しんで倒れてそのまま死んでしまい、バチが当たったと恐れをなして返すことにしたようです。
東大寺の故・筒井寛秀師の著書に、事件のてんまつが詳しく書かれていました。




東大寺ミュージアムでは、いま、不空羂索観音さんの宝冠を間近で見ることができます。

法華堂の修理に伴って、不空羂索観音さんは東大寺ミュージアムに退避中ですが、宝冠などの持ち物は修理に出ていました。
このほど宝冠の修理が終わり、単独で展示されているものです。

  朝日新聞の記事→

宝冠はふだんは不空羂索観音さんの頭上を飾っていて、お堂の中では遠いし薄暗くてよく分かりませんでした。
今回の展示では、宝冠を360度ぐるりと回ってじっくり見ることができます。
そして宝冠のすぐ前には、観音さんが両手のひらで包んでいた水晶玉も展示されています。
上の朝日新聞の記事に出ている写真を拡大すると、宝冠の手前に水晶玉が見えています。




実際に宝冠を間近で見ると、その大きさに驚きました。
後頭部にあるプレートにはなにやら文字が彫ってあるようですが、よく分かりませんでした。
宝冠の金属部分はすべて銀製鍍金で、水晶、ヒスイ、真珠、コハクなどの宝石類が1万数千個も使われている豪華絢爛さ。


以前の記事にも書きましたが、考古学者・森浩一先生は著書「天皇陵古墳への招待」の中で、この宝冠について書いておられます。

   不空羂索観音が制作された時代は、
   すでにヒスイの勾玉などは流通していなかったはずなのに
   なぜこのような宝冠ができたか。
   それは平城京の造営工事で古墳を壊したときに、
   出土した副葬品をこの宝冠に流用しているからではないか。

続日本紀の和銅二年(709)十月十一日の記事には、土木工事中に古墳を壊すことがあったら酒を注いで祭り、死者の魂を慰めるように、と勅命が出ています。
もし森先生の説が本当なら、壊した古墳の被葬者の魂が勾玉などに乗り移っているように思われて、ちょっと気が滅入ってしまいました。




来年、法華堂の修理が終わると、観音さんはお堂に戻り、宝冠も水晶玉も元の状態に戻ってしまうはず。
ですから今回の展示は本当に貴重な機会だと思います。

  ※しかし、このチラシのデザイン。なんだかなぁ・・・・


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★白雪さん、こんばんは!
ルパンは昭和よりもっと昔にはいなかったんでしょうか。
あれだけゴージャスなものが現在まで存在していることが不思議でなりません。
日光月光菩薩さんはたしか塑像でしたね。
長い間、何度も地震に遭っているはずなのに、こちらも今までよく残ったものだと思います。
法華堂はこれなであのスペースにお像を詰め込みすぎで、少し息苦しい感じでしたが、来年からは改善されるということですね。
ただ、不空羂索観音さんと日光月光菩薩さんはセットのイメージがあるので、すこし寂しいですね。
★かぎろひさん、こんばんは!
今の時期、奈良市内では一番のオススメでしょうね。
> 宝冠だけに時間を割くという、何ともぜいたくな鑑賞
そうそう、これはぜいたくな鑑賞です。
ワタクシが見たときは、開館時間が延長されている日で、19時30分ごろに行ったら、ほぼ貸し切り状態で、宝冠をずっとなめるように見ていました。
もう一度、見に行こうかと考えています。
あ、そういえば、来週36kmウォーキングでしたね。
PANDRAさんのアドヴァイスがあるので、大丈夫でしょう。

こんばんは!
先日、貞慶展の後、行く予定だったのですが、仏像館を出るとかなり疲れを覚えて断念。早く行きたいものだと思っていたら、思いがけず本日、実現しました。
郷里の友人たちから「今、奈良公園にいるけど、この後どこがお勧め?」と聞いてきたので「そりゃ、東大寺ミュージアムよ」とエラソーに言い放ち合流した次第です。
宝冠だけに時間を割くという、何ともぜいたくな鑑賞をしました。
>このチラシのデザイン。なんだかなぁ・・・・
同感、同感!!
化仏がクローズアップされすぎでは? 宝冠全体を出してほしいな。んで、背景の黄色もいまいち。あわーい水色とかのほうがええのんちゃうん、などと勝手な思いをめぐらしました~^^;
あっ、盗難事件のお話には震えました。

おはようございます。
先日行って来ました。間近に見る宝冠ルパンが狙うのも頷けました。
法華堂には単身でお帰りになるそうですね。日光月光菩薩様はこのままミュージアムにお留まりになるそうです。
法華堂が狭いため地震などのことを考慮されての配慮だそうですよ。
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