入江泰吉の文楽


『入江泰吉の文楽』写真展




入江泰吉記念奈良市写真美術館で開催されています。(9月29日まで)


チラシのコメントから抜粋:

   昭和20(1945)年3月14日未明、
  大阪大空襲によって街は火の海と化してゆきます。
  大阪鰻谷で写真店を開業していた入江泰吉の店舗兼自宅もこの時に焼失。
  空襲警報が鳴り響き、真っ暗な中で光枝夫人が分からないままに持ち出したものが
  「文楽」のフィルムでした。

   入江は昭和14(1939)年から自宅近くの四ツ橋文楽座に通い、
  文楽の撮影を始めます。
  作品を次々に発表し世界移動写真展や日本写真美術展で受賞、
  初の個展「文楽人形写真展」を開くなど、
  写真家としての道を切り開きました。

   当時の文楽は吉田文五郎や初代吉田栄三といった名手がそろう黄金期で
  華やかな舞台が連日、繰りひろげられていました。
  入江が特に心惹かれたものは「人形の首(かしら)」。
  舞台裏の電球の下で無表情に並べられた「首」が放つ独特の哀感に魅せられ
  多くの作品を生み出します。
  また人形たちに生命を吹き込む遣い手の楽屋での姿や舞台裏の人々の姿も撮影し、
  華やかな舞台の姿だけではなく
  人間の魅力にも引き込まれ撮影し続けます。

   戦前および戦後間もない数年間でしたが、
  写真家・入江泰吉にとって充実した日々であり、
  奇跡的に戦災を逃れた入江泰吉最初期の代表作「文楽」を紹介します。




空襲で焼失してしまったほかの作品もあったようですが、
イリエ写真ワールドのいわば原点とも言うべき作品が残されていたのは
幸運としか言いようがありません。

今回の貴重な写真展を観て、
構図やライティングなどの技術はもちろんのこと
内面までも引き出すようなカメラワークは
大和路を中心としたその後の風景写真につながっていると感じました。
そして大和路の風景写真だけで入江泰吉を語るべきではない気さえしました。


当時使っていたと思われるカメラが別室に展示されていました。
二眼レフのRollei Cordで、レンズはCarl Zeissの7.5cm F4.5(?)。
使用フィルムはロクロクで、ベタ焼きもまとめて展示されていました。
ベタ焼きにはトリミングの指示書きもあって、
作品に仕上げる検討過程も垣間見ることができます。




さて、この「文楽」シリーズ。

文楽人形の首(かしら)の写真では、
解説本などで採りあげられる一般的なもの以外に
お岩さんや累(かさね)、変わったからくりモノなど
あまりお目にかかることのない珍しい首もありました。

被写体が文楽人形中心なので、
一緒に写された人は人形遣いが多く、
吉田文五郎、初代吉田栄三、二代桐竹紋十郎などといった面々。
そして大夫の二代豊竹古靱太夫、三味線の四代鶴澤清六といった方々も。
(文楽初心者のワタクシは存じ上げない方ばかりなので、メモした)


  『妹背山婦女庭訓』 道行恋苧環 吉田文五郎とお三輪 (チラシから)
  7901-11org.jpg



  初代吉田栄三と弁慶 (チラシから)
  7902-11org.jpg



先ごろ文楽関係者がこの写真展を見に来られたそうで、
目頭を押さえていた方もいらっしゃったようです。
戦前の四ツ橋文楽座の舞台の様子を撮った写真もありますし、
とても懐かしく、思い出のある写真ばかりだったのでしょう。


展示会場にある説明書きを読んで驚いたのは、
人間国宝の現三代目吉田簑助さんを入江が撮っていたこと。
先日、国立文楽劇場で簑助さんの至芸を拝見したばかりですが、
入江は戦前に簑助さんの子どものころの黒衣姿を撮っていたんですね!
このサイト(→)に出ている簑助さんは6歳、10歳のころでしょうか。
これ以外の簑助さんのかわいらしい写真も数点展示されていました。
簑助さんファンだけでなく、文楽ファン必見の写真展ではないでしょうか。


残念ながら今回の展覧会用の図録は無いようですから、
展示会場で作品をしっかり目に焼き付けてください。
ただし今回の展示から3点だけ、絵ハガキになったものがあります。
購入した2点をご紹介。

7899-11org.jpg








開館時間や料金などについては、
入江泰吉記念奈良市写真美術館HP(→)でご確認ください。

 ※奈良市クールスポット実施期間中(7月20日~9月1日の正午~午後5時)は
   入館料が半額です。
 ※『ミスター・ウエット・イリエ』展も同時開催中。












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★かぎろひさん、こんばんは!
帰省されているとのこと。
暑いといっても、高野山麓なら朝方は涼しいのでは?
ワタクシは、どこにも出かけず、家で避暑です。(笑)
でも、あしたは奈良がらみの“取材”をしてきます。
入江泰吉の今回の写真展については、
おそらく多くの人が大和路風景中心の
「ミスター・ウエット・イリエ」展に気が向くと思ったので、
原点となる「文楽」展にも目を向けて欲しいなと思って、
勝手に盛り上げてみました。
最近、個人的に文楽に興味津々ですし。
黒川紀章氏のデザインはガラス張りで、庭も含めて気持のいい空間を演出していますね。
外観写真の右奥に、新薬師寺のお堂が少し見えるのもいい感じです。

こんにちは!
残暑お見舞い申し上げます。
お盆休みはどちらへ? ご報告を楽しみにしております。
私のほうは高野山麓ですが、変わらずあつ~い!
「入江泰吉の文楽」展の詳しい情報をありがとうございます。行く予定ですので、ますます楽しみになりました。
最後の、写真美術館、水に浮かぶようで素敵。黒川氏、喜ばれそう。
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