平家にも優しい重源さん(2)


(その1へ戻る)


シリーズ2回目です。


阿波民部重能(成良)[あわのみんぶしげよし]は平家側の家人、武将でしたが、
壇ノ浦の戦いで源氏側に寝返り、平家軍の敗北を決定的なものにしました。
源氏側に勝利をもたらしたにもかかわらず、その後、
重能は籠に入れられて火あぶりの刑というご褒美が与えられました。

実は、治承4年(1180)12月、平重衡(たいらのしげひら)率いる平家軍が奈良に攻め入ったとき、
その先鋒を務めたのがこの阿波民部重能。
何の罪もない多くの庶民を虐殺した平重衡と同じ大罪人です。

この重能、出身地の阿波国にお堂を建て、9体の丈六阿弥陀仏を安置しようとしていました。
あるじを失った阿弥陀仏は俊乗房・重源さんによって東大寺に引き取られました。

  よっしゃ、まかせなさい! by重源
  dscn7587-11.jpg

憎むべき大罪人で仏敵と思われていた重能に対して、重源さんは宗教家として慈悲深い処置をしていますね。




さて、江戸時代初期に描かれた「東大寺寺中寺外惣絵図」を見ると、
今の東大寺俊乗堂のあたりに浄土堂の跡があります。


  なぜか持ち運ばれなかった石塔の一部が残る鐘楼丘(右に俊乗堂、左に鐘楼)
  7169-11.jpg


  同じ鐘楼丘の行基堂の前にある石塔の一部
  7167-11.jpg



俊乗堂ができる前に建っていた浄土堂に、
重源さんが引き取った9体の阿弥陀仏が安置されていたとのことです。
9体の丈六の阿弥陀仏が安置されていたということは、かなり大きなお堂だったのでしょうね。
浄土堂は永禄10年(1567)の三好・松永の合戦で焼失し、阿弥陀仏も運命をともにしたようですが、
この阿弥陀仏のものと思われる手が残されています。

  (図録より)
  7130-111.jpg



「東大寺寺中寺外惣絵図」で描かれている浄土堂の跡の周辺には、
供養塔と思われる石塔が数基描かれています。
石塔の横には、それぞれ阿波民部重能、俊乗石廟、源義朝公、源朝臣頼朝公と注記されています。
これらの石塔は公慶上人が今の俊乗堂を建てる際、伴墓に移されたとのことです。
伴墓は東大寺大仏殿の北方にある三笠霊園の中にあって、そこに重源さんのものと言われる墓石があります。
今の俊乗堂あたりにあった俊乗石廟というのが、これに相当するようです。

  重源さんのお墓
  8515-11.png


  重源さんのお墓を東から見ると生駒山がかなたに見える。
  8523-11.png



重源さんの墓石の周囲には古い石塔があり、
その中に阿波民部重能らの供養塔も含まれている可能性があります。



(その3へ)



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コメントありがとうございます

こんばんは!

ワタクシもじっくり時間をかけて散策することがなかなか叶わず、近隣にお住まいの方がうらやましいです。

訪問する季節、時間帯によっても、また別の気付きがあったりもします。

そのような気付きを少しずつ記事にアップできればと思っています。

bonbonnoさんの補完ができれば、これはもうとても嬉しいことです。

今後ともよろしくお願いします。

No title

こんばんは♪

東大寺の物語りは実に興味深いです。
訪ねるたびに新しい発見がありそうなw

いつも思うんですが、東大寺を朝から晩まで
ゆっくり時間を掛けて歩いてみたいものです。
旅行者の身としては、なかなか贅沢な時間の
使い方なので、難しい日程ですが。。。

この想い、なむさいじょうさんのブログで
補完してます。(笑

コメントありがとうございます

こんばんは!

読んでいただいて、ありがとうございます。

今の俊乗堂あたりにあった浄土堂がどんな建物だったのかも、興味が尽きないところです。
いわゆる大仏様だったのかも知れませんね。

三笠霊苑での写真は、2012年8月9日、二月堂およくの際に立ち寄って撮ったものです。
汗だくでした。(笑)

興味シンシン

こんにちは!

いやぁ、おもしろいです。
これを読んで、東大寺境内を歩くと苔むした石塔がいきいきと語りかけてくれそうですね。

三笠霊苑、とても明るい感じで撮れていて、これは夏の頃でしょうか。

私が行くのはいつもなぜか冬なので、とても新鮮です。生駒山も市街もすっきりして、今度は別の季節に行ってみようと思いました。
あの急坂を夏に上るのはきつそうですけど・・・
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